EDCを利用した治験では、従来の紙CRFによる治験に比べて、モニタリングの方法が大きく変化する。
今回は、EDC利用治験で変わるモニタリングに関して考察してみたい。
1.医療機関の利用環境調査の実施
医療機関における利用PCに関して、事前に以下の調査を実施しておく必要がある。
・当該EDCシステムで利用可能なクライアント(PC)であるか
・OS、Internet Explorer等のバージョン、リビジョン
・ウィルス駆除ソフトがインストールされているか
・セキュリティを侵害するようなソフトウェア(WINNY、パスワード自動入力ツール等)がインストールされていないことの確認
・インターネット環境が適切か
・クライアント設置場所が適切か
2.治験責任医師等への教育・訓練
研究会等で、治験責任医師、治験分担医師等に十分な教育を実施しておかなければならない。
教育を受講していない場合は、EDCを操作してはならない。
特にセキュリティについての教育は重要である。
EDCを利用した治験では、紙CRFのように筆跡が残らない。
したがって、安易に権限のない者に自身のパスワードを教え、入力や修正、承認をさせるといった行為が起こりえる。
いわゆる「なりすまし」という不正行為である。
なりすましは、真正性を脅かす最大の不正行為である。
さらに治験責任医師は電子署名に関する教育を受けなければならない。
Part11や厚労省ER/ES指針が要求する通り、電子署名のもとに作成された電子記録は、事後否認(後に真正なものではないと主張すること)ができないことを周知しておかなければならない。
なお、EDCの操作等に関する教育は、イーラーニングで代用することも可能である。
3.施設訪問時の確認事項
訪問の度にセキュリティ(特にパスワード)が守られていることを確認しなければならない。
また都度、パスワードを他人に教えないことを周知しなければならない。
すなわち権限のない者に、入力・修正作業をさせないことを繰り返し徹底すること。
またセキュリティを侵害するような事態(ログオン時に表示されるパスワード入力ミス回数等)がなかったかを確認する。
中央検査機関から検査値が直接EDCに電子的にUploadされた場合、すみやかに治験責任医師等に報告し、検査値の確認(異常変動、有害事象等)を要請しなければならない。
EDCを利用した場合、直接クエリー(問合せ)を発行することができるが、安易にデータマネージャがクエリーを治験責任医師等に発行してはならない。
必ず担当モニターが確認すること。
4.症例報告書の写しの提供
当該医療機関で最終被験者が終了(LPO)した際、症例報告書の写しをすみやかに当該医療機関に提供しなければならない。
このことは見逃されがちであるが、製薬協の自主ガイダンスにおいて要求されている事項である。
治験依頼者は臨床試験データを独占してはならない。
症例報告書の写しを医療機関に提供することによって、治験依頼者側に
よる改ざんを抑止し、不正が起きないことを証明することができるのである。
症例報告書の写しを提供する際には、医療機関に対し、CD-R等メディアの保存性確保のための手順書(取り扱い方、保存環境等)を交付すること。
(つづく)
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