医療機器の設計・開発・申請における規制要件入門 ~品質、有効性及び安全性の確保~ 5講 医療機器と有効性

臨床評価とは?

医療機器というのは必ず臨床データを集めなければならないということになっている。
これを臨床評価という。
診断装置(IVD)、診断機器または診断薬を作られている企業の方々の場合は、臨床評価はなく性能評価と言いう。
医療機器は臨床評価、診断機器または診断薬は性能評価と言う。

実際の医療機器は人で使われるので、人を用いた臨床データを収集することによって、その有効性を評価するということは、極めて重要である。

臨床評価の中でも特に医療機関に依頼してプロトコールを作って恣意的に患者さんを集めてやる評価のことを臨床試験と言い、別名治験とも言う。治験というのは、治療的実験を略して治験という。
臨床試験が義務付けられる場合もあるが、多くの場合は臨床評価を実施する。
医療機器であるが故に、たとえクラスI機器であっても臨床評価が必要である。
臨床評価をしないでいい医療機器は何一つない。
なおこの臨床評価の結果も申請資料に添付をしなければならない。

臨床評価の実施時期

臨床評価は医療系のライフサイクルを通して実施される継続的なプロセスである。
よって、申請が終わったらもう臨床評価をしないでいいということではない。

まず市場参入に必要なデータを特定して、入手する目的で医療機器の開発中に実施する。
けれども臨床評価は欧州の場合、最初のCEマーク取得には必須であって、その後積極的に更新しなければならないという規則が出されており、これPMCF (Post Marketing Clinical Follow-up)という。
要するに設計開発中に臨床評価をすることと、もう一つは、リスクと同じで市場に出て以降も本当に有効性があるかということを、リアルワールドデータ (RWD)と言いますね本当の臨床の現場で、リアルワールドで評価するということが極めて重要になっている。

なぜ、臨床評価が重要か?

なぜ臨床評価が重要かというと、前述のように、そもそも医療機器は人に対して使用するものなので、臨床評価に安全性と有効性を評価する事は当然であると言える。
よって臨床評価は医療機器の安全性と性能が十分な臨床的なエビデンスに基づいて市場における機器のライフサイクルを通して継続的に評価されていることを保証するために重要であるということである。

なぜ、継続的な臨床評価が必要か?

医療機器の開発時に想定されたリスクベネフィット比というものがある。

リスクベネフィット比とは、医療機器にリスクがあっても、ベネフィット(効用)がリスクを上回っていれば、医療機器は上市することが可能である。

ところがここで一つ読者にご承知おきいただきたいことがある。
医療機器は上市して以降、有効性は下がる一方であり、リスクは上がる一方なのだ。
なぜならば、有効性(ベネフィット)が下がるのは、新しい医療機器、新しいセラピー、新しい治療薬、この医療機器に代わるもの、例えば内服薬は出るなどにより、別の治療方法が見つかるとか、技術革新が起きるという事が発生するからである。
よって、上市した瞬間から有効性(ベネフィット)は下がり始めていく。

一方で電子レンジに猫を入れた例を紹介したが、上市後、時間の経過とともに開発時、設計時には思いもよらなかったリスクが発生してくるので、リスクは上がる一方になる。
すなわち上市した瞬間からリスクベネフィット比が、どんどん悪くなっていくのである。

そこで継続的にこのリスクベネフィット比というものをモニタリングしなければならない。
リスクベネフィット比を常に評価をしていくと、時間の経過とともに果たして最初に申請した段階のリスクベネフィット比が維持できているのかどうか、これを評価する必要がある。専門的にはState of the artという。
最新の情報、最新の規制要件や他社の製品、類似製品、もっといいセラピーが出てないか、もっといい技術が出てないか、ということを常に製品のライフサイクルを通じてモニタリングし、医療機器の設計変更を求めいかなければならないのである。

医療機器というのは、スマホとかパソコンのように、常に技術改良が求められ、常にバージョンアップが求められる。常に有効性・安全性を担保したうえで、設計変更を実施し、よりQOLの改善をしていくことが求められるということなのである。上市後も継続的な臨床評価によって、リスクベネフィット比を見直す必要があるということにご留意いただきたい。

市販前臨床評価

市販前の臨床評価は、まず製造業者が臨床評価計画書を作る、または臨床試験の場合は臨床試験の実施計画書(治験実施計画書)を作る。
次に医療機関やユーザーに集まって頂いて臨床評価をするのだが、例えば、科学技術の文献をレビューするという方法や過去の臨床データや評価解析を用いることもあるし、前述の通り臨床試験いわゆる治験を実施することもある。臨床評価の方法は機器のクラス等によって異なる。
これらによって得られた臨床評価の報告書を文献にまとめて技術文書して申請書に添付しなければならない。この技術文書を用いて、規制当局はその医療機器の有効性を評価する。

市販後臨床評価 (PMS/PMCF)

市販後の臨床評価、これをPMS (Post Marketing Surveillance) それからPMCF (Post Marketing Clinical Follow-up) という。
製造業者は上市後、市販後監視計画書、PMCF計画を作成する。この計画に沿って、例えば苦情や安全性情報を収集する。これはGVP省令等に基づいて実施する。それからリアルワールドデータで臨床データを集める。
開発時・設計時に推定できなかった、新たなハザードやリスクが見つかった場合は、リスクマネージメントに一旦インプットし更新して、リスクを許容できるところまで低減させる設計変更をする。

この市販後に集められた臨床評価の結果は、PMCF評価報告書や市販後調査報告書、PSURなどの臨床評価報告書にまとめて、これを定期的に当局に報告することや、または次の医療機器設計に役立てていく必要がある。

お役立ち動画

https://www.youtube.com/watch?v=oO0EJOa9NPg

医療機器の設計・開発・申請における規制要件入門 
 ~品質、有効性及び安全性の確保~
1講 医療機器と規制要件
2講 医療機器の種類
3講 医療機器と品質
4講 医療機器と安全性
▶ 5講 医療機器と有効性
6講 医療機器申請と当局査察

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本邦では、医療機器企業(製造販売業)においては、QMS省令(体制省令)およびGVP省令に則った体制の構築が出来ていなければなりません。
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ISO 13485は、マネジメント(経営者)の責任・リソース(資源)の配分(Plan)、製品実現(Do)、監視測定(Check)、改善(Action)といったPDCAサイクルで構成されています。
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経過措置期間は 3年間であり、2024年3月26日(改正省令の施行の日から起算して3年を経過する日)には新QMS省令を遵守しなければなりません。
今回の改正の趣旨は、QMS省令と医療機器の品質マネジメントシステムの国際規格であるISO13485:2016と整合を図ることです。
改正前のQMS省令はISO13485:2003年版と整合させており、最新の国際規格からは遅れていました。

厚生労働省は、2021年3月26日付で新QMS省令に関する逐条解説も公表しています。 「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について」(薬生発0326第10 号)

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・改正QMS省令逐条解説
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ご希望の方はこちらからダウンロードをお願いいたします。

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