一方で規制当局は、サプライチェーンがグローバル化していることに伴い、海外査察の回数を増やしている。
しかしながら、査察にかけることができるリソースは限られているため、効率的な査察手法が必要である。
従来の査察では、査察官から指摘された事項を是正しておけば、容認されてきた。
しかしである。わずか数日の査察(日本においては4日間)で査察官が発見することができる問題点・リスクは数が限られている。
したがって、査察官が発見したエラー(リスク)に対して是正を行えば自国民の安全が守られるということにはならない。
そこでFDAなどの査察では、エラー(リスク)を発見する査察手法から、当該企業が経営者のガバナンス(統治)のもと『品質システム(Quality System)』を確立しているかどうかを調査するといった手法に切り替えている。
品質システム(QS)では、以下の4つのPDCAサイクルを定義するのが一般的である。
1.マネージメントプロセス
2.リソースプロセス
3.開発・生産プロセス
4.有効性向上プロセス
マネージメントプロセスでは、経営者が品質方針を作成し、また年度毎に品質目標をたてる。品質目標では、達成可能な目標であることと、具体的な数値とともにその達成基準が明確になっていなければならない。例えば、顧客苦情を3ポイント減少させる、逸脱を5ポイント下げる、顧客満足度を10ポイント増加させるなどである。また、定期的にマネジメントレビュを実施し、品質改善に関する適切な指示を出さなければならない。
リソースプロセスでは、経営者は適切なリソース(人、モノ、金)をあてがわなければならない。口頭で指示するだけでリソースを準備しなければ、品質改善が実行できないからである。例えば、要員を雇用する、教育訓練を実施する、コンサルタントを雇うなどである。
開発・生産プロセスでは、QMSに従って、研究・開発・設計・製造・流通・サービス等を実施する。その目的は、ユーザニーズ(要求)に合致した製品を市場に出荷し、顧客満足度を得ることである。
有効性向上プロセスでは、顧客苦情などの収集を行い、再発防止に向けた是正措置・予防措置を行う。
是正措置で重要なことは、問題の根本的原因を調査し、それを解消することにより、再発を防止することである。是正と修正は異なることに注意が必要である。
また内部監査を実施し、潜在している問題点(つまりリスク)を自ら発見することである。なお内部監査は「Self Inspection」(自主的な査察)と呼ばれている。Self Inspectionは、日本の省令等では「自己点検」と訳されているが、この用語は適切ではない。Self Inspectionでは、企業自らの内部監査等によって、日々リスクを発見し、是正・予防することが重要である。つまり当局査察で指摘されるのを待って改善するのではなく、企業自らが積極的に改善活動を実施するのである。是正措置・予防措置や内部監査の結果は、マネージメントプロセスにフィードバックし、マネジメント(経営者)が、マネジメントレビュなどによって改善指示を出したり、次年度の品質目標をたてることになる。
こういった品質改善の仕組みを「品質システム(QS)」と呼ぶ。品質システム(QS)はPDCAが基本である。
品質システム(QS)が存在するということは、今日よりも明日、明日よりも明後日は品質が向上するといった保証が存在するということである。
なお、品質システムの仕組みをQuality Management System(QMS)と呼ぶ。
FDA等の査察では、企業自らが品質システム(QS)を確立しており、査察が実施されていなくとも査察官と同様の目線(レベル)で指摘・改善活動が実施されていることを確認するのである。 そのためには優秀な監査要員の確保が最重要である。 品質システム(QS)が確立されている企業は、査察官にとって「安心」できる企業であるといえる。
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日本におけるFDA査察はどのように実施されるのでしょうか。本セミナーでは、演者のこれまで多くのFDA査察対応コンサルテーションや、実際のFDA査察に立会った経験からFDA査察対応のノウハウを惜しみなく説明いたします。
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指摘事項が何もない場合は良いのですが、指摘事項がある場合は、連邦食品医薬品化粧品法704(b)項「査察官は指摘事項を文書で製造所に提示すること」に基づいて、査察の最後の講評時(クローズアウトミーティング)に、FDA Form 483が発行されます。
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FDA Form 483により指摘された内容に対し、15営業日以内(必着)に改善策、スケ ジュールを盛り込んだレスポンスをFDAに送付しなければなりません。
FDAは、2009年8月発表のFederal Registerで 「FDA査察の指摘事項(FDA Form 483)への回答期限を15日以内とする。Warning Letterを速やかに出せるようにするためである。」 と通知しました。
FDAに対するレスポンスは、査察を実施した査察官宛に送付するのではなく、FDA本部に送付することに注意が必要です。指摘へのレスポンスは極めて詳細である必要はありません。また次回査察時に改善実施について確認されるので、確実に改善ができることを書くことが重要です。つまり、机上の空論のようなことは書いてはいけません。
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FDAは、2014年10月に「医薬品査察の遅延、拒否、制限、拒絶に相当する状況についてのガイダンス」を発行しました。つまり【査察妨害】に関するガイダンスです。
では、いったいどんな行為が【査察妨害】に相当するのでしょうか。
FDA査察においてはFDAの要求事項(21 CFR)への深い理解が求められることはもちろん、査察本番における適切な資料のスピーディーな提出も必要となります。
本セミナーでは、まずFDAの要求事項や指摘事項等などの理論面を解説し、さらに当社が経験してきた実際のFDA査察事例をもとに、FDA査察本番でとるべき対応をわかりやすく説明します。
また、来るべき査察時に使える「FDA査察対応計画書」、Form483への「回答書のサンプル」を電子ファイルにて配布いたします。”]
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