コミュニケーションの重要性

本年度に改正が予定されているGMP省令では、第四条(予定)の「上級経営陣の責任」において「製造所ごとに、製品品質及び医薬品品質システムの問題等に係る情報を、すべての職員から適時に上げるための情報伝達の仕組みを、構築、維持すること。」という要求が盛り込まれる予定だ。「情報伝達(コミュニケーション)」は品質方針などが製造業者、製造所全体に行きわたっていることと、製造現場の情報が経営層にまで届いていることの双方がある。 経営者はいつも従業員に向けて“法令を遵守する”ということを訴え続けることが重要である。経営者のそういった姿勢があってこそ、何か問題が起きたとき、品質不良にかかわる事項が発見されたとき、迅速な対応を可能にし、従業員の中にも法令遵守意識が生まれる。 一方で、昨今のGMP調査では、品質システムが適正であるかを調査することに主眼が置かれている。当該品質システムが個々の製品に落とし込まれて、仕組みが適正に運用されていることが重要である。品質情報の把握・評価・対策に不備があることで製品回収につながることもある。現場の担当者が品質上の異変に気づくこともある。それが経営者にも伝達され、組織内で共有できることが重要である。組織として共有することで必要な対策を迅速にとることが可能になる。 組織にとって情報共有が重要であることは言うまでもない。しかしである。本当に報告しやすい文化を醸成しているであろうか。人は必ず間違うし忘れる。しかしミスを上司に報告すれば叱られてしまう。そこで小さなウソをつく。その小さなウソを隠すためにちょっと大きなウソをつく。それを隠すためにもっと大きなウソをつく。発覚した時には対処し得ないくらいの大問題となってしまうことが世の常である。ISO 9001のような国際規格や、データインテグリティの要件では、このコミュニケーションの重要性がうたわれている。ミスをしたことを報告した人ほど褒められなければならない。なぜならば改善の機会を提供したからである。人は必ずミスを犯すのであるから、仕組み(システム:QMS)を改善してミスを発見、予防できるようなプロセスに改善しなければならない。 まずは経営者は「報告しやすい文化」を醸成することだ。 ]]>

ISO 9001を取得しても品質が向上しない訳

ISO 9001は、品質管理システム(QMS)に関する国際規格である。多くの企業では、顧客の関心を得るためにこぞってISO 9001を取得してきた。しかしである。ISO 9001を取得している企業であっても、品質が向上していないことが多い。その理由は、いつしかISO 9001の認証を取得することがゴールとなってしまったことにある。本来は、ISO 9001に従ったプロセスを構築し、PDCAを回すことによって日々品質改善を図らなければならない。しかしながら、ISO 9001を取得するためだけに品質マニュアルなどの文書化を行い、文書を一通り揃え、文書に従った記録を作成するといったことが繰り返されてきた。いわば形骸化された文書化と記録の作成に終始してしまったのである。これでは到底品質など向上する訳がない。企業はISO 9001を取得するために多くの予算と人員をつぎ込み、形骸化された文書作成を続けてきたのである。そのため、経営者の多くはISO 9001のメリットに対して疑問を持ってきた。ISO 9001もこの点を反省して、ISO 9001:2015からは文書化要求が大幅に緩和された。ISO 9001:2015おいては、品質マニュアルの作成でさえ要求されていないのである。従前の文書化に関しては、”文書化された情報を維持する”という表現に変更され、従前の記録の作成は”文書化された情報を保持する”という表現に変更された。こういった少しあいまいな表現を使用することにより、文書化や記録の作成が目的(ゴール)ではなく、手段であることを示唆しているのである。しかしながら、品質マニュアルを作成することは極めて重要であり、文書化も記録の作成も必要であることに変わりはない。ISO 9001:2015では、結果主義が重んじられている。つまりプロセスを構築しただけでは不十分であり、結果として品質が向上しなければ意味がないのである。そのためには経営者はリーダーシップをもち、品質に対するコミットメント(責任のある約束)を出し、結果を保証しなければならない。QMSの実効性(有効性)が問われているのである。 ]]>

改正GMP省令について

厚生労働省やPMDAの講演を聴いていると「承認事項遵守」といった発表が頻繁にある。一度不正を行った企業は、これまで長期にわたってその企業名を講演会などで引用され、いわば人身御供のように取り扱われている。 承認事項を遵守することは当然のことである。不正はけっしてあってはならない。 しかしである。世の中の(特に日本の)製薬企業でそれほどまでに不正が日常茶飯事に行われているのであろうか。また承認事項さえ守っていれば、はたして品質の良い医薬品等が製造できるのであろうか。そんなことはあるはずがない。改正GMP省令の案の発出は予定よりも1年半も遅れている。最近では話題にも上がらないようになってきたようにも思える。日本のGMP省令はPIC/S GMPなどグローバルの規制に比べて15年も遅れている。これでは国際標準に到底追いつけない。特定の企業の不正を執拗に糾弾するよりも、全体の品質保証レベルを上げる方が急務ではないだろうか。 ]]>

Self Inspectionの重要性

PIC/S GMPの第9章はSelf Inspectionである。本邦の規制要件等(GMP省令、GVP省令等)ではSelf Inspectionを「自己点検」と訳している。しかし、筆者はこの訳は適切ではないと感じている。当局による査察であるAuthority Inspectionに対して Self Inspection は企業が自らを査察することである。つまり「自己点検」ではなく「自己査察」、すなわち「内部監査」のことである。Self Inspectionは、内部監査の他、外部監査、定期レビュ、マネージメントレビュなどからなる。 当局査察は数年おきで、しかも数日間実施されるのみである。そこで指摘された事項のみを改善したとしても、患者の安全性や製品の品質は担保できない。大事なことは、当局査察がなくとも、自らが自らを“査察”し、“指摘”し、“改善”することである。Self Inspectionの重要性を再認識されたい。 監査員の力量筆者は製薬企業にかかわらず、医療機器企業や医療機関、諸外国の原薬工場等の査察・監査に対するコンサルティングをするが、監査員の能力が非常に低いことに驚く。例えば、監査員に製造経験がなく、製造に関するリスクの指摘が全くできないケースがあった。監査報告書を見ていると教育記録についてのみ指摘していた。これでは製造プロセスの品質向上やリスクの低減は望めない。ひどいケースでは、転記ミスやエラーの指摘ばかり行っている監査があるが、これでは本末転倒である。文書の書き方を修正したところで品質保証にはならない。これらの指摘は、患者の生命・健康の担保にはまったく関係のないことであり、そのような指摘を出すような企業では規制当局は安心できない。したがって、監査員は当該プロセスのプロでなければならない。つまり、製造を監査する監査員は製造の経験者でなければならない。また品質試験を監査する監査員は品質試験の経験者でなければならない。その上で最新の規制要件等の要求事項を適切に理解していなければならない。 洞察力を持って指摘し、根本的原因を発見し、それらをつぶして再発を防止する。またたとえ問題が起きていなくとも、品質システムや組織などに潜むリスクを発見し指摘しなければならない。監査員にはこのように非常に多くの能力が必要である。 監査員に適した人材最近でこそ日本の企業も色々な会社から異動・転職してくる方が増えたが、生え抜きの人間には監査は困難である。なぜならば自らの経験したやり方しか知らないからである。つまり、自社のプロセスを是としているためである。 規制当局の査察官、筆者のようなコンサルタントは多くの企業のプロセスを見てきている。そのため、他社とのベンチマークにより、問題点やリスクの発見が比較的容易である。他社(Best Practice)と比べ足りていない箇所があればそれがリスクであると判断できる。また転職者には、前職でのプロセスと比較することが出来る。適切な監査の実施のためには、こういった比較対象の有無や、さらに洞察力も必要となるため、生え抜きの人には難しいのである。また、監査員はきちんと指摘して改善をさせるという能力も必要となる。 そのためには監査員は、他人に批判されることを恐れず、上下関係に問わず皆に平等でなければならない。監査は常に独立性と公平性が求められるのである。 GMP省令における自己点検GMP省令の第18条が自己点検である。下記の要求がある。 製造業者等は、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。 一 製造・品質関連業務について定期的に自己点検を行うこと。二 自己点検の結果を品質保証に係る業務を担当する組織および製造管理者に対して文書により報告すること。三 自己点検の結果の記録を作成し、これを保管すること。2 製造業者等は、前項第1号の自己点検の結果に基づき、製造・品質関連業務に関し改善が必要な場合においては、所要の措置をとるとともに、当該措置の記録を作成し、これを保管すること。 また、逐条解説には、下記の事項が解説されている。 自己点検責任者を設置すること。 自己点検責任者は、自己点検の対象となる業務の内容を熟知している職員であること。 自己点検責任者は、当該自己点検の対象となる業務に従事していない、客観的な立場にあること。 自己点検に係る業務の一部を外部委託業者に委託する場合、適切な管理を実施すること。 自己点検報告書(または自己点検記録書)を作成すること。 自己点検の結果を品質保証部門および製造管理者へ文書により報告すること。 製造管理者は自己点検報告書の結果により適切な処理を実施すること。 責任者の適切な配置 人員の十分な確保 管理体制の整備 その他必要な資源の配分 教育訓練 自己点検の対象(GMP省令の場合) 製造管理者の業務 医薬品製品標準書および手順書の作成等 交叉汚染の防止措置 構造設備の保守、点検等 製造管理業務 試験検査業務 品質保証業務 安定性モニタリング 製品品質の照査 原料等の供給者の管理 外部委託業者の管理 製造所からの出荷の管理 バリデーション 変更管理 逸脱管理 品質情報および品質不良等の処理 回収等の処理 教育訓練 文書および記録の管理 文書および記録の保管 データインテグリティ […]

パンデミックとBCPについて

現在、新型コロナウィルスによるパンデミックが発生し、終息の目途が立たない。このパンデミックによって事業縮小を余儀なくされたり、倒産に至った企業も存在する。また従業員の雇用が保てず、また新規採用の取り消しも発生している。ところで読者諸氏の企業では業務継続計画書(BCP:Business              Continuity Plan)を作成しているだろうか。実はBCPには2種類ある。1つは「激甚災害編」であり2つ目は「パンデミック編」である。激甚災害とは、地震や津波などである。実は、「激甚災害編」と「パンデミック編」では対応方法が真逆であることをご存じだろうか。 激甚災害編地震の特徴としては 局所的である 予告なく発生する(予測不可能) インフラ(携帯電話、メール)などがダウンする などがあげられる。地震が発生した際に必要なことは、如何に早く人を集めるかである。あらかじめBCPで指定して置いた場所(郊外のオフィス等)に地震発生72時間後に集まり、災害復旧本部を立ち上げるのである。集合場所には、パソコン、ノート、筆記類、食料・飲料水、寝具などをあらかじめ備えておく。またあらかじめ代替サイトを決めておき、製造などを継続させる。さらに重要な医薬品等は90日程度の備蓄を持っておくことが必要である。 復旧の手順は、おおよそ以下の通りである。1.インフラ(メール)2.勘定系・営業系システム3.製造系システム4.開発系システム パンデミック編パンデミックの特徴としては あらかじめ予測できる(例:日本で1症例目が発生すると2~3ヶ月後にピークを迎えるなど) 全国(世界中)に蔓延する 終息がある程度予測できる などがあげられる。パンデミックが発生しても休業できない業種は数多く存在する。例えば、警察・消防・医療機関・役所などである。パンデミックの発生が予測される際に必要なことは、如何に人を集めないかである。例えば、部長以上はテレワークとし、従業員の半数を自宅に待機させ、重要な製品に限って残りの従業員で製造を継続する。その場合、本人または家族が罹患した際に自宅待機に切り替え、代替の要員を出社させるのである。つまり、常に50%のマンパワーで操業することが重要である。また、オフィスワーカーの場合はテレワークを実施する必要がある。ネット会議などに不慣れな人や、忌み嫌う(食わず嫌いな)人も存在する。そのため、例えば部長職以上は年に1回テレワークの予行演習を実施しておかなければならない。自宅から適切に業務の指示が行え、決済・承認などを実施しなければならないからである。 今回のパンデミックを機にテレワークを採用する企業も増えた。今年からは5Gのサービスも開始される。今後はテレワークがより進むのではないかと感じている。 ]]>

品質目標と経営目標について

改正GMP省令では、経営者が品質システムを構築し、品質方針および品質目標を文書化することが要求される。これは品質マネジメント規格であるISO-9001の要求事項と同じである。しかしである。ISO-9001の認証を受けた企業でも起きがちなことは、品質目標と経営目標が整合していないということである。つまり、品質目標を達成したとしても経営目標が達成できないのである。多くの場合、経営者は品質方針や品質目標において、顧客の耳障りの良いことを書く傾向にある。一方において、経営方針や経営目標では、売り上げ向上、シェア拡大、グローバル展開など、利益に関わることがもっぱらである。つまり、経営方針と品質方針では、本音と建前が分かれている状態である。これはよろしくない。ISO-9001などが求めていることは、品質が向上することによって失敗コストなどが減少し、顧客満足度を上げ、その結果として利益が向上するということである。つまり品質目標を達成したならば、経営目標が達成できなければならない。ISO-9001では、経営目標と品質目標の整合性を求めている。 医薬品品質システム(PQS)を構築するにあたり、経営者は品質システムに品質方針を織り込み(文書化し)、各部門の長に品質目標を立てさせることになる。各社が一体どのような品質方針・品質目標を掲げるか関心のあるところである。  【2021年度改正QMS省令対応】QMSひな形一式 ]]>

医薬品品質システムについて

改正GMP省令では、医薬品製造所は医薬品品質システム(PQS:Pharmaceutical Quality System)を構築することが求められる。しかしながら、本来品質システムは製造所単位で構築すべきものではない。品質システムは製造販売業が製造業を含めて構築しなければならない。日本の場合、製造販売業者と製造業者を区別しているところに問題があると思われる。 医療機器規制は、2014年のQMS省令改正により、製造販売業者が製造業者を監視監督することとなった。これに伴い、医療機器の製造業者は業許可ではなく、登録制となった。QMS省令(もともとは医療機器GMP)は、製造販売業者にも適用されることとなった。このような制度は医薬品にはない。 製造販売業者と製造業者が同一法人である場合、製造業側に経営者が存在しないケースがある。これでは品質マニュアルの構築、品質方針の立案、品質目標の設定等、マネジメントレビュの開催などにも支障をきたす。例えば、製造所ごとに品質システムを構築した場合、その長が工場長となり、取締役ではないこともあり得る。果たして工場長が経営方針を立て、品質方針を設定できるだろうか。またマネジメントレビュ(経営者による見直し)を実施する権限が与えられっているだろうか。 苦情の収集は製造販売業者がGQP省令に則って実施することになる。回収においても同様である。製造業者は苦情に関しては製販業者から伝えられた「品質情報」の一環として対応するのみである。一方で、FDAは21 CFR Part 211「§211.198 Complaint files(苦情ファイル)」において苦情の取扱いに関して詳細な規則を定めている。これは日本と米国における規制要件の中で立て付けがかなり異なり、手順を作成する上で注意しなければならない点である。ICH Q10「医薬品品質システムに関するガイドライン」においてはGMPの適用範囲以外に医薬品開発や技術移転を含んでおり、さらにGQP・GDPにも及んでいる。 本来、品質システムは製造販売業者が販売業者を包含し、医薬品開発・技術移転(CMC)・製造・流通(GDP)・市場品質監視(GQP)の全体をカバーすることが望ましい。 ]]>

自己点検について

日本の各省令(GMP、GVP等)においては、「自己点検」に関する要求事項がある。PIC/S GMP等では、自己点検は「Self Inspection」である。つまり数年に1回の当局査察(Authority Inspection)での指摘を待たずに自身で日々”査察(Inspection)”を実施して指摘を行い、CAPA(是正処置・予防処置)によって改善(再発防止)を実施するのである。従って、Self Inspectionとは内部監査のことである。FDAやPMDAの査察においては監査結果は調査されない。これは監査の独立性を担保するためである。もし、当局が監査報告書を調査することとなった場合、監査報告書にまずいことを記載しなくなるであろう。一方で欧州の考え方は異なる。監査結果を積極的に調査するのである。その目的は、当局の指摘に頼らず、自社で指摘し改善を行っていることの確認のためである。また査察官は監査報告書で自らが指摘し改善を実施した事項に関しては指摘してはならないという原則がある。このような仕組みにすることによって監査が促進され、改善が進むのである。 日本は儒教の流れを汲んで「性善説」の文化である。そのためまもなく発出予定の改正GMP省令においては自己点検結果をQA部門へ報告することとなるようである。しかしである、QA部門は監査しなくても良いのであろうか。一方において、欧米はキリスト教の文化であり、「性悪説」をとっている。ここにおいても監査(自己点検)に対する考え方に相違がある。 ]]>

リスクアセスメントとは

FDAは2003年以降、リスクベースドアプローチと呼ばれる医薬品監視指導方針を執っている。リスクベースドアプローチでは、製薬各社にリスクアセスメントを実施するよう求めている。では、リスクアセスメントとはいったいどのようなものであろうか。例えば、ハンバーガーショップでハンバーガーを焼く工程があったとしよう。製造指図には「180℃で3分間熱すること」と記載されているとしよう。ここで問題は、180℃に満たなかった場合や、3分間に満たなかった場合、熱がハンバーガーの奥まで届かず殺菌ができないため食中毒事故を起こしてしまうというリスクがあり得るのである。そこで考慮しなければならないのは、どういう場合に180℃に満たないといった失敗事象が発生するだろうか。例えば・バーナーが故障(見える範囲は正常だが中央や奥で詰まってしまっているなど)している。・温度計が故障している・温度計の針を読み間違えるなどである。一方で、3分間に満たないといった失敗事象は・時計が故障している・時計の針を読み間違えるなどである。このように、製薬の各プロセスにおいても、機械の故障やヒューマンエラーといった観点で、どのようなリスク(失敗事象)があるかをアセスメント(調査)しなければならないのである。リスクが明らかになれば、おのずとリスクの回避策が発見できる。・バーナーの日常点検を実施する・温度計や時計を2系統にする・(必要ならば)温度計や時計を2人で確認するなどである。 関連商品 ]]>

改正GMP省令について

ご承知の通りGMPは「Good Manufacturing Practice」である。そのまま直訳すれば「実践製造規範」である。しかしながら、厚生労働省令においては「医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準に関する省令」となっている。このタイトルは、改正GMP省令では改めて欲しいと筆者は考えている。なぜならば、同じ医薬品であっても、「ビタミン剤」「栄養剤」と「抗がん剤」「向精神薬」「抗ウィルス薬」では”基準”は異なるはずだからだ。 GMPは1963年に米国FDAによってはじめて示された規則であるが、当時は確かに「基準」を示していた。しかしながら、2002年にFDAが示した「Risk based Approach」においては、もはや当局は”基準”を示さず、製品やプロセスのリスクに応じて製薬企業が自ら”基準”を定めなければならないのである。そのためには、企業はICH-Q9「品質リスクマネジメント」に従ってリスクアセスメントを実施し、その結果を文書化しておかなければならない。その上で企業は当局に対して”基準”が適正であることを説明しなければならないのである。 「Risk based Approach」に移行した最大の理由は、患者負担の軽減である。すべての医薬品やプロセスに対して同一の”基準”を課すことは不合理であり、いたずらにコンプライアンスコストを跳ね上げてしまうのである。企業にとっても当局から”基準”を示された方が業務はし易い。しかしながら「実践製造規範」であるため、プロフェッショナルな業務遂行が求められる。決して”基準”を示されなければ業務が出来ないといった素人考えでは患者の安全性を担保することはままならない。 ]]>