ANNEX 11改定版の考察

EU薬事規則はVolume 1からVolume 9まであります。
その中でVolume 4がGMPです。
このGMPには、付属資料がありAnnexと呼ばれています。
その第11章であるAnnex11は、コンピューター化システム(Computerised Systems)です。
現行のAnnex 11は「原則」「要員」「バリデーション」「システム」の4つの枠組みからできていますが、たったの2ページであり、概念的なもので具体性には乏しいようです。
Annex 11の改定版のドラフトが2008年2月にGMP/GDP InspectorsWorking Group(IWG)によって承認され、2008年4月にパブリックコメント(public consultation)募集用に発表されました。
改定版のドラフトは9ページあり、規制要件としては、限界まで具体的なものにしたと思われます。。
2008年10月31日までパブリックコメントを募集しています。
改定版はPrincipleと19の章からできています。
特に注目すべきは、第13章「Printouts」です。
「記録の印刷は、オリジナルの入力からデータに変更があったかどうかを示すものでなければならない。
複雑なシステムの場合、査察官がオンラインでシステムの電子記録(例えば、データベース、クロマトグラフィ、プロセスコントロール等)にアクセスし、調査できることが必要となるかもしれない。」とあります。
これは、規制当局は紙媒体よりも電子で査察を行うことを示唆しています。
米国ではPart11発効後に、Typewriter Excuseという言葉が生まれました。
Part11査察を受けた製薬企業の主張は以下のようなものでした。
「真の記録は紙の記録である。我々はコンピュータを単に記録を作成するために使っているに過ぎない。」
これに対してFDAは「プリントアウトを本質的に信頼することはできない、なぜならプリントアウトにはデータの再構築または生データから再現するために必要なメタデータ情報を含んでいないからである。」
等と主張しました。
つまり印刷物には、監査証跡等のメタデータの情報がなく、規制当局が紙媒体で査察を行った場合、その改ざんの有無が確認できないのです。
多くの場合、いわゆるハイブリットシステムを運用されていることと思います。ハイブリットシステムとは、電子で記録を作成し、紙媒体で署名することを言います。
この場合、紙媒体上で承認をしたからといって、電子記録を削除してはなりません。
なぜならば改ざんしたものを印刷し、承認したのち、証拠を消したと判断される可能性があるからです。
FDAは、印刷後に電子記録を削除したシステムに関してワーニングレターを発行したことがあります。
Annex 11は、こういった米国の規制当局と製薬企業の議論をよく研究し、改定案を作成したようです。
Annex 11の改定に伴い、PIC/Sの改定も必至と思われます。

]]>

Related post

Comment

There are no comment yet.

We noticed you're visiting from Japan. We've updated our prices to Japanese yen for your shopping convenience. Use United States (US) dollar instead. Dismiss